年末御礼参り

  

タイのビジネス界には年末恒例のお礼参り(挨拶回り)というのがある。
お歳暮のような贈り物をもってお世話になったお役所や会社を回るのである。

その1:どういうところをまわるか

 営業会社であれば客先をまわることが多くなる。例えば何年もお客を連れて行ってもいないにもかかわらず、シーロムのG宝石店は毎年わざわざアユタヤの私のところにもお酒と飾り物を持って来てくれる。

 外資系製造会社の私の会社ではまわる先はだいたいほとんどが官公庁である。「王室官房」、「商務省」、「工業省」、「労働福祉省」、「税関」、「警察」、「移民局」、「投資委員会事務局」、「工業団地公社」、「アユタヤ県庁」などである。挨拶に行く相手は行く人間と普段からのコネクションに応じて変わってくるが、それぞれの組織のトップから事務手続きの担当者までいろいろである。トップクラスには当然アポイントを取って行くが、担当者クラスにはこの時期いろいろな手続きの書類とかをもって行くときに、手みやげをもって行くのである。

その2:なにをもって行くか

 伝統的?には例によってデパートなどで篭にお酒や食料品などを詰め合わせたバスケットである。600バーツぐらいから最高で3〜4000バーツぐらいまでののものがあるだろうか。(最近は自分で選んでないので詳しくは知らない。ずれてるかもしれない。)最近では商品券などをさしあげるケースもある。相手が担当者クラスであればもっと安くすますためと、大勢でわけてもらうためお菓子の詰め合わせなどを持っていってそのセクションの人たちで食べてもらうとか。会社のカレンダーなども持って行く。

 大変なのはボリュームである。この時期どの会社もこの挨拶回りをするのであるが、2トントラックにバスケットを山積みし、お偉いサンや担当者といっしょに片っ端から得意先やお役所をまわるという光景がよく見られる。

 当然お役所などでは受け取る方も数多くの贈り物を受け取るので、お偉いサンであれば応接セットのまわり、担当クラスであれば事務机のまわりにこの種の贈り物が山積みとなる。また役所の廊下には、各社の人たちが自分たちの車からおろして運び込んだバスケットなどがたくさん置かれ、そこから一つづつあちこちのオフィスに持ってまわる各社の人たちの前線基地になる。

その3:どんな話をするか

 お偉方に会うときは、つまりは年末のあいさつと新年のお祝いを述べるのである。特に懸案事項があればこの際頼んでおくこともある。またふだんから当社を担当してくれる担当事務方の人の名前をあげて大変感謝している由売り込んであげるのも気配りである。

その4:印象に残った人達

 今年はボスが急用で日本に帰ってしまったので、代理で私があちこち回ることになってしまった。以下はそんななかで印象に残った人達。

国王筆頭私設秘書:日本で言えば侍従長とでもなろうか、当然血筋も王室に近いやんごとなきおかたである。こういう人に面会するといろいろと儀礼的なことを勉強することができる。来客を自分の応接で迎えるときの場所や案内のしかた。椅子への座り方、見送りのしかたなどなど、こちらは会社の代表で緊張しているのであるが、なかなか説明されてもピンとこないことが、「なるほど、こういう風にするのか」と合点がいくのである。「こういうのはOJTに限る」と思った。それにしてもこういうお方の立ち居振る舞いは実にノーブルかつエレガントである。

工業団地公社総裁:こちらがただの挨拶文句だけで帰らなかったところ、椅子に座るように言われ「あなたに質問がある。」と言われた。「お宅の会社のXXXは今年○○○だったが、どういうことか。」と鋭い質問で来た。予習していなければけっしてできない質問であり、産業政策の一部を司る本人としては見過ごせない問題でもある。無駄な会話はいっさい好まない若いエリートである。「来年助けてもらいことを端的に言いなさい。」なんてはっきり言う人はあまりいないです。

移民局検査官:美人である。30台中盤であろうか。アジア地域からの業務外ビザをあつかう部署の責任者である。普段から当社にはたいへん協力を的なかたではある。タイのイミグレーションビューローは警察のセクションであるから、警察官と同じユニフォームを来ている。自前であつらえて作るせいもあろうか、警察に限らずタイのオフィシャルのオフィサーはユニフォーム姿としては格好が大変よろしい。警察も4軍の一つであり、軍隊でなくても税関などもそうだが線や星の数が物を言う。すらりとユニフォームを着こなした女性のボスが、とっても美人となると負けそう。

その5:おまけ

(おまけその1):当然会社にくるプレゼントと出て行くプレゼントがあるわけである。缶詰や砂糖の詰め合わせなど改めて欲しがる人ももいないし、公平にわけるのも難しい。したがって「まわす」という行動が人間の知恵として出て来る。昔の日本でもよくあった。うちの会社でもそういうアイデアを出す人がいた。実際にはやったことはないが、世間の実態はよく知らない。

(おまけその2):どこのオフィスでも年末はプレゼントの交換会がある。何百バーツぐらいと決めて皆でプレゼントを持ちより、番号をふって抽選であたったものを持って帰るのである。昼休みとかにやっていて、そういう日の午後の始まる前などは、だれかが引き当てた置物のオルゴールかなんかの音があちこちでする。ああ、年末だなという感じがする。


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