第19回

マニュアルはあっても(下)

  

仕組みや道具立てがすべてではない

 まだ景気の良かった頃はバンコクの市内のあちらこちらで、毎日のようにファーストフード店の新規開店がありました。私も仕事の外出の時や、子供たちを連れた休日にこういう店舗を利用することがありますが、前回見たほどの無統制の例はまれとしても、新しく開いたばかりのお店というのはなかなか興味深い観察の対象です。

 筆者はこのような業態のお店のオペレーションについては詳しくは何も知りません。しかし、徹底的にマニュアル化された業務標準によって均質で高水準、高効率のサービスを実現していることが、日本のビジネス雑誌に紹介されているのを良く読みました。事実、筆者の日本での経験によれば、新装開店した店舗でも若干の不慣れを感じさせはするものの、おおむね普通に営業している店舗に遜色ないサービスを提供しているようでした。従業員の訓練にも感心したものです。

 しかしタイではまったく別の経験をすることがあります。世界の業界ナンバーワンやナンバーツーのビックネームならずとも、接客や作業についてはおそらく世界共通の業務マニュアルやジョブスタンダードがきちんと整備されているものと思います。しかし前述の様な例においては、まともな訓練とちゃんとした管理監督者に欠けていることは明白です。

 こういった世界的なチェーンでは、新規採用の社員やパートタイマーに所定のトレーニングを施し、開店前に錬度をチェックするようになっていると思います。従業員のトレーニングが不十分であるのか、合格水準が甘いのか、あるいはこの程度でもスタートしてしまえ(せざるを得ない)という経営者の判断なのか、いずれにせよマイペンライのなせる技であることは違いないようです。立派なマニュアルも泣いていることでしょう。

 (了)

 

 


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