第25回

そんなものじゃない?

  

 

 だいぶ前のことになりますが、私と同年輩の某社の駐在Aさんがある得意先の日本人経営者Bさんを訪問されたときのことを話してくれました。
 Aさんはある地方の貧しい子供達の学費をサポートする奨学金をプロモートされているのですが、商談も済みいつか話がこの奨学金の話になったそうです。タイの地方の貧しい家庭の子供達の修学環境、すなわち日本人にしてみればほんのポケットマネー程度の金額が用立てできずに進学できない子供達、の話をしていたのだそうです。

 「そうしましたらね、そのBさんは『これだから困る』っておっしゃるんですよ。」
 「ちょっとタイの田舎の入り口を見たぐらいで貧しさを語るんものじゃない、という風でした。そのような奨学金や片手間の手助けでタイの貧しさを救うことにはならないって。」
 Bさんは在泰十年に近い事情通で、タイの事情を深くつぶさに見て来たのでしょう、Aさんの話を、いわば日本人の安易な社会貢献意識とでも云えるようなものとしてお説教がしたかったのかもしれません。

 「すっかり叱られてしまいました。」
 「困るって、何がどう困るっていうのですか?」
 「それは特に何も。ただそんなものじゃないと。私ももっと良く勉強しないといけないといけないですね。」
Aさんのトーンは少し高くなりましたが、話しぶりは人柄を反映して終始謙虚です。

 「何どう足りないとか、ご自分のされていることとか・・・」
尋ねると、Aさんは、首を横に振りました。
 「そうですか。でも、よくありますよね、こういうの。だから何なんでしょうね。かえって、そんなものじゃないって気もしますが・・・」
 「だから何っていうか、ただ、わかった気になっていてはいけないということでなんでしょう・・・」
Bさんのような方、少なからずいらっしゃると思います。みなさんはどう思われますか?

〈了)

 

 

 


目次に戻る