第31回

日本のテレビ放送はいかが

  

 

   土曜日の午前中、最近放送形式の変わったNHKの映り具合を調整しにアパートのエンジニアがやって来ました。

 なにやら我が家のテレビをいじっていた彼は、そのうちアンテナ端子部分を本体の内部に押し込んでしまい、背面のカバーにぽっかり穴があいてしまいました。

 メーカーのサービスセンターも休みですし「しょうがないなあ」と私も手伝って三十キロ近い大型テレビをひっくり返してカバーをはずし、ようやっと直ったと思ったら、こんどは音が出ません。またひっくり返してカバーをあけて、やれ「ラジオペンチを貸せ」、「接着剤だ」と筆者もチーフエンジニアに変身し汗まみれの大仕事になってしまいました。

 なんとか正常に映るようになったので、順番にチャンネルを切り替えていると突然異様なものが画面に映りました。

 一瞬何かと思いましたが、それは男の顔のアップで、眉、鼻、唇など一面にたくさん長い紐のつながった洗濯ばさみをつけているのです。それらの紐は一つに束ねられ、穴のあいた四角い箱のなかに導かれ、別の面の穴からはまた数本の紐が出て、そのうちの一本を別の人が選んで引っ張るのです。つまり運が悪く洗濯ばさみとつながった紐が引っ張られると、いっぺんに彼の顔から引きはがすことになるわけです。

 その仕掛けを見て取った瞬間「こんな馬鹿なことをやるのは・・・」という直感から、日本のテレビがちゃんと映るようになったのを確認しました。それはNHKと同時に映るようになったもう一チャンネルで放映されている民放のバラエティー番組のひとこまだったようです。

 正直言って、苦労して見えるようになったものがこんなものかと思うと寂しくなりました。冷静に映り具合を確認するエンジニア君の真剣な顔を横目で見ながら「日本、なんとかしてくれ」と心のなかでつぶやいた筆者でした。。

〈了)