第32回

二つの経済(上)

  

 

 外国に資金援助をするようになり、もはや発展途上国ではないといわれるタイです。最近調べものをしていてインターネットをうろうろするうちに次のデータを見つけました。

 日本:    三八、八五○ドル(第3位)
 シンガポール:三二、九四○ドル(第6位)
 米国:    二八、七四○ドル(第8位)
 タイ:      二、八◯◯ドル(第57位)
これは一九九七年の国民一人当たりGNPです。(世界銀行による)

 かつて九五年頃にある分析をしていたとき、来世紀に入る頃にはシンガポールの一人あたり所得は日本を抜くだろうと筆者は確信しました。アジア経済危機と呼ばれる状況のもと、今や多少事情が変わっていますがそれでも、このデータは筆者の確信をさらに深めるに十分です。それに比較してタイの値はずいぶんと低く、この一覧表の上でも"lower middle income countries"に分類されています。

 シンガポールとバンコクのショッピングモールを歩いて比べてみただけでは、ちょっとギャップが大きすぎるように思えるかもしれません。しかし地方の農村を歩いてみればまた違う印象をもつでしょう。バンコク周辺の国民の一部が国家の付加価値の半分以上を稼ぎだしていることを思えば納得できる数字です。バンコク周辺だけを一つの国と考えることは無理がありますが、仮にそういう試算をすれば、おそらくはシンガポールの三、四割、少なくとももう一桁上になることは間違いないと思います。

 地方の貨幣のウエイトの低い経済と、バンコクの産業社会経済、二つの経済があるのは何もタイに限った話ではないでしょうが、国全体が比較的均一な中で育った日本人には改めて目の当たりするまではなかなか思い及ばない点です。

 

 


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