第34回

Eメールの四季

  

 

 インターネットでホームページなどを開いていると、ご覧になったかたから電子メールをいただきます。この電子メールのようなテクノロジーの産物に季節を感じることがあるというと不思議に思われるでしょうか。
 三月は卒業旅行のシーズンですが、事前の下調べのためか、二月頃になるとタイやバンコクの気候や地理、旅行事情についての問い合わせのメールが来ます。同じ時期から四月の転勤シーズンを前にタイに赴任が決まったみなさんから、当地のインフラ事情、衣食住や学校などの生活事情、日本から持っていくべき品物、コンピュータ通信事情などのお問い合わせをいただきます。

 五月連休の前にまた旅行関係のメールが来はじめ、夏休みまで続きます。
 旅行シーズンが過ぎると「友人や身内がタイを旅行中に連絡がとれなくなり行方不明なのだが消息はわからないか」という、こちらもむげにほおっておけない深刻な問い合わせが年に一回はあります。

 そして十月頃になるとまた大学生からのメールが多くなりますが、問い合わせの内容は急にアカデミックになります。卒業論文の執筆のためです。なかには「タイと日本の文化や風習の違いについて述べてください」という、考えているのかいないのか、たいへんに大胆なご要望もあります。若さというのはこういうものであったかと、あきれつつも憎めないものを感じます。根が真面目なだけに本棚の本をひっくり返し始める筆者ですが、今頃着手してまともな論文が書けるのかと心配しつつ「もっと論点を絞り込んではいかがでしょう」などとといつの間にか論文指導のような返事を書きはじめることになります。

 年々、年始など時候の挨拶のメールも増えてきています。ケーブルを伝わってくるゼロと一の信号の連なりにも季節の色がついて来ました。

〈了)

 

 

 


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