第35回

バランス感覚?

  

 

  あちこちで爆弾が破裂してみせたり、置かれているのが発見されてみたりしていますが、デモンストレーションとしても迫力に欠けます。選挙の近いことを感じさせてもあまり緊迫感は漂いません。

 閣僚三人の不信任案が提出されましたが、それを提出した野党の内部で仲間割れが生じている今、タイでは不信任案の提出は普通のことである、という趣旨のチュアン首相の余裕の発言が政権の安泰ぶりを物語ります。

 アジア大会が成功したことも社会に安定感を与える上で非常な効果がありました。昨年の第四四半期から対前年同月比の物価上昇率の数字は急に下がって来ていますが、これは一昨年の物価上昇を反映したものでしょう。そういう意味で急激な物価上昇はバーツ切り下げのあと為替がピークを迎えた昨年の第一四半期あたりまでのことであったと言えば、生活実感ともほぼ合致します。この雇用情勢ですから労働争議も散発的なものであって、大げさに報道しようとしてもすぐに沈静化してしまいます。

 筆者の個人的な感じ方によるものかもしれませんが、何か不思議な安定感がタイの国を覆っています。たしかに問題は山積しており、それも時間的余裕があるわけでもないのですが、いたずらに感情的に騒ぎを大きくしない、現実の問題を事実に沿ってたんたんと処理して行く大人の落ち着きを感じます。

 タイが長年独立を保ってきていることを説明するときなど、政治、外交、ビジネスにおける「タイ人のバランス感覚」というものがよく語られます。そういう入れ知恵のせいかもしれませんし、またかいかぶりかもしれませんが、今の社会情勢の落ち着きを見ると、タイ人が時に見せる非常にプラクティカルな面の良い現れのようにも感じます。

〈了)

 

 

 


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