第41回

クラスター(上)

  

 

 ある工業団地デベロッパーの社長さんと話をしました。彼は先日米国へプロモーションツアーへ行ったと述べ、米国の企業が最近タイを投資先として注目する度合いが高まっているのを実感したと言っていました。製造業の立地場所としてのタイの優位性は経済危機や不況のただなかでもその将来性には雲がないと思います。

 ハーバード・ビジネス・レビューの日本語版の最新版にマイケル・ポーターの論文が載っています。そのテーマはビジネス・サイトのロケーションの重要性をクラスターというビジネスのインフラやリソース、技術やノウハウ、人脈やアイデアなどの集積で説明したものです。今日情報ネットワークの発展と普及に伴ってバーチャルカンパニーなど、物理的な場所を越えて機能ユニットを結びつけてビジネスを行う、「ロケーションはクリティカルでなくなった」とする今日的潮流がありますが、それらとは一見逆の論旨を展開しています。シリコン・バレーなどをみればわかるように産業の集積に伴うロケーションの重要性は厳然と存在しています。

 工場の立地場所の選定など従来のロケーション・スタディは人材や原材料、電気や水、輸送のインフラのアベイラビリティや原単位コストを比較検討するようなケースがほとんどです。ポーターの論点は、そういった従来のスタディから漏れがちな人的ネットワークや暗黙知の集積などに着目するものです。この視点からは金融クラスターとしての香港やトレーディングクラスターとしてのシンガポール、電子部品クラスターとしてのマレーシアなどは成功例とすることともできるでしょう。一方、工業団地開発、博覧会やリゾート展開など金太郎飴のように同じことをそこら中で展開した日本の地方開発などはお粗末な例とされるのでしょう。このポーターの論旨はかように産業政策や企業立地のポイントをついたものであると思います。

〈つづく)

 

 

 


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