第45回

現地調達のジレンマ(2)

  

 

  ここで企業にとって、そしてタイ国にとっての現地付加価値向上の必要性、重要性についてあらてめて触れる必要性もないと思います。十年ほど前までのどの国の現地付加価値増大要求も、企業の立場からすると現実の理解に欠ける硬直したものが多いように感じていましたが、タイ政府のこの点での要請はあまり強くないように感じました。輸入代替型にしても輸出型にしても外資による活動が薄いなりとも現地付加価値を持てばそれはゼロよりは無限大に良いという認識があり、さらに規模の拡大と集積がシナジー効果をもたらすことを本能的に嗅ぎ取っていたかもしれません。

 産業連関規模の大きな自動車の例で考えてみると、先日も触れたように同じASEANでも国民車構想を持つ他の国とタイのスタンスは違います。十年ぐらい前すでにASEAN各国に日系自動車メーカーの現地市場向け生産工場があり、どの国が突出したわけではなく、各社とも設備の採算点に達しない生産量やKD生産によるコスト高に直面したのではないでしょうか。その結果各国のあいだでキーユニットを相互に輸出して供給しあう方式がとられましたが、自動車の発動機やトランスミッションのように嵩も重量もはる物資を海上輸送に頼るこの方法は、むしろやむを得ない苦肉の策であったことでしょう。ASEAN自由貿易圏という発想はもちろん歓迎する要素の多いものですが、海上輸送の多く発生するこの経済圏はある種の弱点を持っていることも事実です。

 最近は若干事情がことなりますが、かつてOA機器の製造もその生産規模は中途半端で部品メーカーの設備を採算にのせる規模がなく、サポーティングインダストリも家電製品などの構築した基盤に相乗りする形をとるしかありませんでした。

 国内資本の充実を目指すにしても、それよりもこの競争の時代、とにかくまず産業を集積して幅と厚みを形成することを優先しても良い時代だったと振り返ることもできます。

 

 


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