第52回

駐在員の要件(2)

  

 

 駐在員の要件の第二番目には「状況を受け入れ未経験のことにも冷静に柔軟に対応できる こと」をあげたいと思います。

 タイで仕事をしている多くの日本人の口から「そんなばかなことが許されるわけがない」とか気色ばんだ言葉が出ます。たしかに神経逆なでされるようなことは多いです。「そんなばかなことが起こっている」わけですし、良い悪いを自分が決めたところで起こっている事実を変えられるわけでもありません。ましてカウンターパートをなじるに「自分ならこんなことはしない」とからいばりしてみたところで、批評だけで飯が食えるほどのんきな日本のオフィスのような職場が世界のどこにもあるわけではありません。なにごとも、自分の物差しでフィルタをかけたり評論してしまわないことが重要です。

 「自分の仮説に合う事実のみに注目してしまう」とか、状況判断や意思決定の際に陥りがちな人間の一般的性向というものがありますが、牽制してくれる人や相談相手のいない駐在員はその危険性を常に認識している必要があります。自分のやり方を相対的、客観的に見られる謙虚な勉強家であれば心配は少ないですが、「いばるタイプ」は要注意でしょう。まずは状況を受け入れる姿勢が必要です。冷静で客観的であればあるほど注意深く事故や不正などの危険を予知する能力も高くなります。

 また当地での経験の深い方は、いいかげんな情報に右往左往しない様、情報を鵜呑みにせず出所や伝達ルートなどにより気をつけていらっしゃると思います。タイの日本人社会では同じ話が複数のルートから聞こえても出所がひとつのことが多いです。そういう意味で普段から交際範囲が限られると危険です。複数の人間の間で伝聞でつたわってきた情報は必ず歪みます。日系企業間に流れる口コミ情報に実に不正確なものが多いことを知っておかねばなりません。

 

 


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