第53回

駐在員の要件(3)

  

 

 さて、駐在員の要件の三番目は「赴任駐在員としての正しい使命感をもっていること」です。

 「正しい使命感とは何か」はもちろん簡単に一言で尽くせるものではありませんが、「駐在」という外地での生活が業務に伴って発生する以上仕事を置いておくわけには行きません。

 赴任を希望する者には注意が必要で、何が本人の目的がよく見極めないと業務に力がはいらず、結局本人も欲求不満に陥ることにもなりかねません。忙しい時期などはプライベートな時間はないといっても過言ではありませんから、たとえばタイの文化を研究したいと思ってもかなえられません。もちろん仕事一辺倒というのも困りますが、自分でコントロールしてもらわねばなりません。

 「現地に溶け込む」というインストラクションを誤って解釈して、現地人化してしまう人もいますが、日本人がタイ流で行動するのでは駐在の意味がありません。日本人として現地に貢献できる付加価値を付けられなければ現地人を使うべきですし、お客様にとっては仕事をする人が日本人もタイ人もないわけで、自分の給与が高いことを自ら論理的に説明できるかを問う姿勢が欲しいと思います。また現地にないものをもたらすわけですから、現地の人と摩擦があって当然。巧拙はあれ軋轢ゼロで物事をすすめたいと考える駐在員がいたら認識不足です。

 無理を言えば、外部(特に本社)の評価や伝聞にいちいち拘泥しない懐の深さと大きな視点も欲しいです。海外の苦労の80%は本社には理解できないと達観して、その上で前のめりに行動できる、自己実現意識がないとかえって精神的に追い込まれます。駐在を通じて自らが成長しようという意識をもって努力している人なら、どんな経験をムダにはしないことでしょう。

 

 


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