第54回

駐在員の要件(4)

  

 

 最後に「肉体的にも精神的にも強いこと」について述べたいと思います。

 肉体面での強さについては何も述べる必要はないでしょう。
日本を向いた上司と現地人の板ばさみになったり、駐在年数を重ねるうちに先端技術に取り残されていくような恐怖感を感じたり、子供の教育に悩んだり、ただでさえ精神的に不安定になりやすい海外駐在生活において、仕事が困難を極めますから精神面へのプレッシャーは大きいです。

 よく言われるように駐在期間が数年に限られるとなれば、ついつい目の前ばかりを見がちです。短い間に実績をあげようとすればさらに気負いもすぎ、あせりもつのります。人の三倍努力して成果をあげるとします、そのときに一・五倍の評価では満足できず三倍評価されなければ気がすまない、という人にとって海外勤務はいろいろロスが多く、いらだちがつのることでしょう。また成功体験しかない人は自分のとってきた方法が良いと信じ、それが唯一の正解であったと錯覚しがちです。外国でこれまで自分が成功してきた方法が通用しないとかえってひ弱な面を暴露します。

 どうすればいいのでしょうか。これまでに述べてきたことに重なる部分がありますが、「自分が納得できない状況にどう対応して行くか」という精神面のスキルがとても重要だと思います。理不尽に思える状況を、ずっと辛抱していく、または受け流してしまう、あるいは自分を合わせてしまうなど、どんな方法であれ粘り強くたんたんとやっていけば前には進みます。続くかどうかです。

 言い伝えられている「あせるな、あてにするな、あきらめるな」という言葉はタイ駐在の心構えを実に良く表わしているといると思います。落ち着いて何事にも動揺せず、常に一貫した態度で粘り強く臨むための強さとは、明るくタフで気に病まないということです。

〈了)

 

 

 


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