第58回

計算能力

  

 

勤務先の工場から毎年現場監督者クラスの人間を日本に研修に送っています。今年も中国の工場の研修生と共に、日本の製造の現場の古参監督者にいろいろと教えてもらいましたが、その日本の監督者から「(タイの研修生は)計算能力が中国の研修生に比べ著しく劣る」という講評をもらいました。

最初に現地法人の工場を設立した際、調査項目のなかにローカルスタッフの読書きと算数の能力がありました。はじめてタイに来て町で買い物をした際、おつりが暗算ですっと出てくることにまずほっとしましたが、いざ採用試験をはじめてみると安心できるのは加減算のみであることがわかってきました。以来いろいろな経験を通じて問題意識だけはずっと持っていたのですが、この日本の監督者の指摘に改めて何らかの取組の必要を感じました。

事務系大卒のスタッフが縦横計算を間違えたときに「私は数学は専門ではない」と言い訳するのですから、計算の訓練をすればよいという単純な世界ではないことが推察されます。数的推理力の必要性を認識してもらうことなど意識面を含め、能力向上を図らなければなりません。いくら計算機やコンピュータがあるとはいえ、スピードが命のこの時代、定量感覚と速く正確な計算の能力が必要です。

筆算の方法が国によって違ったりするなど、外国人が算数の教育を考えるのは簡単ではありません。同僚とは「何かしないといけないね。まずは学校でどんな教え方をしているのか調べてみようか」という話をしました。

そんなある日ラーメン屋で週刊誌を読んでいたら最近の日本の大学生の学力低下を話題にした記事がありました。興味が湧いたので読んでいましたら、文科系の大学生のなかには分数の足し算すら心許ない人がいると書いてあるではありませんか。本当でしょうか。

〈了)

 

 

 


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