第63回

コミュニケーション(4)

  

 

 通訳や翻訳において気をつけなければならないことはたくさんあり、どうして「上手な通訳の使い方」というハウツー本が書店に並んでいないのか不思議に思うほどです。

 自ら通訳や翻訳した経験のない人、あるいは外国語の習得努力をしたことがない人は通訳経由のコミュニケーションのもつ問題点に鈍感で、自らの日本語に問題があっても(註)愚かにも「通訳が間違えた」で片付けてしまったりして信用を失います。外国語の能力というのは単に会話をができるいう点以外にもコミュニケーション上の問題に対するセンスにつながり、やはり海外駐在には不可欠の要素です。

 筆者の勤務先の海外現地法人では、英米はもちろん、ドイツやフランスに駐在している人はみな現地語でコミュニケーションしています。しかしタイでは駐在員のタイ語の習得に対する義務感が低く、習得度合もお粗末で明らかに違いが見られます。

 その原因は、取引先が日系ばかりであること、現地人が日本語を解したり通訳を使ってしまうこと、メジャーな言語でないため習得意欲が湧かないことなどいろいろな要因があります。

しかし可能な限りタイ語の習得を行うことの重要性は言うまでもありません。 日本語や英語からタイ語への翻訳は容易だがその反対は難儀だということは、タイ語を多少なりとも勉強した人には納得できますが、タイ語をまったく知らない人にはわからないでしょう。タイ語から日本語に翻訳されたレポートを読む時、たとえばある記述が過去のことなのか、その過去の時点で終わっていた過去完了のことなのかなど、翻訳の過程で混乱しがちな点に対する注意力の差になって現れるのです。

(註)勤続年数の長い、阿吽の呼吸に慣れた日本人が社内で使う日本語はブロークン・ジャパニーズになりがちです。す。

つづく

 

 

 


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