第66回

コミュニケーション(7)

  

 

 「ローカル従業員とのコミュニケーションを図るためにどうしていますか」と駐在のかたがたに質問すれば、さまざまな答が返ってくることでしょう。その答には具体的な方法論と一緒にその人のものの見方、考え方や性格まで見えて興味深いです。

 オン・ザ・ジョブにおける対話はもちろん、フリーディスカッションの時間を作ったり、慰安旅行やパーティーといったイベント、あるいは個人的な付き合いを社外で持つなど、皆さんいろいろな努力をされています。

 しかし駐在も長くなるとこういう努力にあまり熱心でなくなることもあります。タイ人の部下(あるいは上司)のビヘイビアにいろいろと悩みをお持ちのかたもいらっしゃると思いますが、仕事の進め方やものの見方、考え方の違いに悩んでいるのであれば、それはコミュニケーションがまだ良いほうと言えるかもしれません。歴史の長い会社であれば組織も仕組みも出来上がっていて、問題を抱えて当事者たるタイ人と直接対峙しなくてはならないような局面も少なくなります。経営者がそれほど悩まなくて済んでしまうケースもあるでしょう。

 先日、日本からの出張者が置いていってくれたアメリカの「管理者べからず集」という本にも「一対一の対決を避けるな」と書いてありましたが、こういうことは万国共通だと思います。結局、人間関係は一対一の特殊関係であり、一般論も参考、あるいは関係の一要素にしかなりません。その相手をなんとかしようとするにはその人間と直接対峙するしかありません。

 苦労の末、仕事がうまく流れるようになり悩みが減っていくうち、ついつい面倒な異文化コミュニケーションから遠ざかるようになっていないでしょうか。本当に深刻なコミュニケーションギャップはその先に待っているように思います。

〈了)

 

 

 


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