第69回

比較文化?(3)

  

 

   東京やバンコクの集合住宅に住んでいる人にとって、一枚の壁の向こう側で生活を営んでいる人と、毎晩ネットワークを通じて仕事や趣味について語り合う海の向こうの人と、どちらがより生活や文化を共有する隣人と言えるでしょうか。

 人の生活習慣や行動様式を決める軸がいろいろ増えているように思います。多様な因子が地理的な位置関係などよりも影響力を強く持つようになっていると感じます。従事している産業や職種の違い、たとえばサラリーマン、自営業、公務員という違いもまた考え方や行動の違いを産んでいて、日頃まるで違う国の人のことを語るようなこともありがちです。これも異文化といえるかもしれません。ジェネレーションによって価値観や生活行動も違い、それもすでに比較の対象ともなり、それらを異文化として捉えることも普通になっているようです。

 かつて「断絶」という言葉がはやりましたが最近は聞きません。しかしこれだけ狭くなった地球にあふれるほどの人間が接して生きているにもかかわらず、隣同士に暮らしているひとびとの間に断絶が広がっているように感じられることがあります。

 性質の違いというのは結局それぞれの要因によって決まる事柄の組み合わせの違いによって説明できてしまうのかもしれません。タイの人は○○だと語るのはとても難しいことですが、バンコクのオフィスワーカーはということになるとだいぶ話がしやすくなります。つまりある軸に投射してものごとを見れば分析もできるが全体像は単純ではないということです。

 人の行動様式、思考パターンを研究することはこういった多様な軸を同時に扱う多変量解析の世界になっているのかもしれません。そう考えたらマーケティングの世界がすでにそんな考え方をしているとも言えなくもないと気がつきました。

つづく

 

 

 


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