第71回

比較文化?(5)

  

 

 日本から赴任して来ればタイの人がどんな人たちで、日本人とどう違うのかが気になります。読んだり聞いたりして一般論でタイ人を学び、自らの体験を重ねあわせて「タイ人とのつきあいにおけるべからず集」のようなことを常に周りに説いて回る人もいます。逆にタイ人の体に気軽に触れてはいけないと言われて「何言ってんだ最後はハートだよ」と言って肩を叩き、大声で怒鳴りながらも実際にタイの人の信頼を集めているように見える人もいます。

どちらの主張も人間関係をある理論や法則に帰結させ自らの行動を合理化しよう、という意思が感じられる点で似たようなものだと言えなくもありません。

 しかし個別の人間関係がどういう原因で成り立っているのかは、日本人やタイ人がこうだからという全体の話で説明しきれるものではありません。相手も考えることのできる人間で、その外国人の行動を許容するかどうかはケースバイケースです。相手が意思を持ち、判断にもとづいて「対応」しているということを忘れてはいけません。

「体に触れるな」とか「大声を出すな」ということが一般論として成り立っても、結局人間関係は個人対個人の特殊関係です。それは一対一でも一対百でも同じです。それが会社という特殊な環境であればなおさらで、雇用者と被雇用者という関係や、マネジメントの良し悪しなど多くのパラメーターがあります。

ですからタイ人はこうだとかああだとか言う前に、誠意があって公明正大で嘘をつかないとか、逃げないとか、真面目に仕事をするといった個別人間関係を成立させる上での基本が問われます。その駐在員が仕事ができるかどうか、信頼できるかどうかという評価は、駐在員の仲間うちでもタイ人の間でも見事に一致します。人間関係の問題を安易に「異文化」で片付けてはいけません。

〈つづく)

 

 

 


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