第74回

比較文化?(8)

  

 

 日本人向けタイ文化セミナーのサブジェクトになぜ「タイ人の自己啓発や自己改革を促すには」という項目がないのでしょうか。それ以前の問題に苦しんでいる日本人ばかりだからでしょうか。せいぜい「タイ人をやる気にさせるには」という項目が目につく程度です。

 タイ人の多くは「タイで営業しているのだからタイ流にやってもらわなくては」と考えているでしょう。しかし「なぜ日系企業に就職したのか、日本のどういうところが好きか」を尋ねてゆくと、なかには日本人の規律と勤勉にあこがれて日系企業に就職した人もいることがわかります。

 かなり昔東京でインド人の理学博士と仕事をしたことがあります。彼女はデリーの裕福な家の出身でしたが、子供のころから父親に日本人の勤勉と規律を見習うように言い聞かされて育ってきて、いつか日本に行きたいと思っていたということでした。同じような話をタイの人からも聞きます。そう聞くとその期待にこたえなければならないという使命感も湧いてきます。

 日系企業は純タイ企業ではないのですから、いくらタイに合わせていっても、日本や日本人の良さを失ってしまってはもとも子もありません。タイの人が「タイの企業とは違う良さがあって、それにコミットすることが自分たちとって自らの可能性をさらに高めるものである」と思えるような会社でありたいものです。

 そのためには「日本的なものが具体的に何であってどんな良さがあり、現実的にどういう効能があるのか」を論理的に分析して明快に示し、成功を体験してもらって実証しなければなりません。この詰めを怠って漫然と日本流でやっていると、いくら教育指導しているつもりでも、いつまでたってもコミットしてくれる人が増えません。口が酸っぱくなるだけです。

つづく

 

 

 


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