第76回

上院議員選挙

  

 

 もうそんなことがあったかと思い出すような現行憲法制定の騒ぎは2年前のことでした。その新しい憲法が定めた上院議員の選挙が来年初めて行われます。

 これまでの上院議員は首相によって退役公務員、軍人、貴族などから任命されてきました。これからは各県ごとの選挙区から選ばれてくることになります。エスタブリッシュメントが握っていた権力が民衆に転移して行くのが民主政治の進歩であるならタイの民主化がまた一歩進むことになります。

 参院不要論があるように日本の参議院はその趣旨が薄まり単なる第二院になってしまっています。タイの上院はこれまでは貴族院的なものでしたが、新しいそれはどうなるでしょうか。新しい上院議員は直接選挙で選ればれますが、政党の関係者は立候補できないことになっているのです。

 現行憲法は政党、政治家不信のスタンスが徹底していますがそれでは何をそれに対抗する位置に据えようとしているのでしょうか。それは学識経験者や専門家であるというのが筆者の印象です。もちろんビジネスマンも含まれてはいるのですが、彼らの多くがまた高学歴者であるということも思い出しておかねばなりません。

 政治家が腐って見えるときに学者や公務員が好ましいようにみえるのでしょうか。最近南部出身の民主党議員の学歴詐称をめぐる騒動がありました。ボス政治家が金で学歴を詐称して議員の地位保全を図るのはインテリにとっては最もがまんできないことなのでしょう。

 徹底的に政治家不信の現行憲法の基本コンセプトには若干首はかしげても実情は理解できますし、新しい上院と旧来の下院との対比がどうなるか興味深いです。どんな候補者が出てくるのか、誰が当選するのか、一万バーツで立候補登録できるという上院議員選挙の行方を見守りたいと思います。

〈了)

 

 

 


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