第78回

新しい政治家(2)

  

 

 タイの新しい政治家の代表といえばやはりタクシン・チナワット氏をおいてありません。1992年の民主化騒動で世界に有名になったチャムロン氏のパランタム党に参加して政界に入り、やがて党首を引き継ぎました。今や自ら設立したタイラクタイ党を率いて、次期首相の有力候補になっています。

 タクシン氏は一代でチナワット社をタイの通信業界を牛耳る大会社に成長させた辣腕の企業家として有名でした。先端産業の経営者が政治に専念するというのは大変意外でしたが、やはり時代のリーダーというのは人並はずれた先見力があるもので、波乗りも実に巧みに、タイの政治の流れをしっかり先取りしていました。

 最近読んだインタビュー記事の中で彼が述べていたこれからのタイの政治家の要件は、まず外国との人脈、国際経済や国際政治への理解といった国際性だそうです。また透明性も大事であり、それも「適切なシステムのもとで公開された献金が行われる必要がある」と言う合理主義に基づきます。

 「GDPよりもGDH(グロスナショナルハピネス)」と言い、「金融機関に資金を供給すれば下まで行き渡るというのは事実ではありません。(公共投資などよりもむしろ)人々が新しい時代を切り拓く機会を与えてゆくべきです。」というように数字よりも実体の経世済民を唱えて、金融官僚や経済評論家とは一線を画します。

 発言はタイの近代、現代の政治に挑戦的です。氏によれば、経済政策は戦略と実行であって統制を中心とする行政や統治を行う政治とは離れたものになる、つまり古い官僚や政治家には引導が渡されるのです。古今東西、戦略を持つ経済政策は強力です。タイの政治は確かに少しずつ変わりつつあり、この国の国際社会でのプレゼンスは高まってゆくことでしょう。

(了)

 

 

 


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