第81回

Y2Kの朝

  

 

 西暦2000年になりました。Y2K問題についてはここまでのところ基幹インフラなどに大きなトラブルはありません。「やはり騒ぎすぎだった、何も起きなかったじゃないか」という人がいるのには驚きます。筆者自身インターネット・ウェブサイトで日付表示の異状をいくつも目撃しましたし、官公庁や企業でもマイナーなトラブルが報告されているのが現実です。大問題やパニックが起きなかったのは、過去数年間世界中でチェックやプログラム修正などの地道な対応作業が続けられてきたおかげです。

 年末のある日按摩屋でおばさんに揉んでもらっているとき、突然「Y2Kは大丈夫か」と聞かれました。「なぜそんなことを」と尋ねると「Y2Kトラブルで電線を火花が伝わってきて火事になるかもしれない」と聞いているということでした。「そういうことはまずないですよ」と答えつつ「ははあ、庶民にはこんな風にも伝わっているのか」と思いました。いきつけの床屋のおかみさんも「あちこちで爆発が起きるんじゃないのか」と言っていましたし、これがバンコクの庶民への周知の程度だったのかもしれません。

 大晦日、カウントダウンの後日付が変わった瞬間、バンコクの街中に花火の轟音と爆竹の炸裂音が鳴り響き、閃光がビルの壁面を照らしてまるで空襲のようでした。

「あのおばさんたちは部屋の中で震えているかも知れないな」と失礼なことを思った筆者ですが、花火が原因で大火事でも起きればおばさんたちの心配もあながち杞憂ではなかったと言えるでしょう。もちろんこのリスクはコンピュータ2000年問題対策のスコープには無かったでしょうが、もし何か事故が起きていれば広い意味で「Y2K危機管理」に漏れがあったと言えるのかもしれません。無事に年が明けて何よりでした。

〈了)

 

 

 


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