第82回

一年の計

  

 

 一年の計は元旦にありと言って、改まってその年の目標を考える習慣がありますが、日本でも最近はこういう習慣を続けている人が少なくなっていないでしょうか。新聞や雑誌の年頭の特集やインタビュー記事を見ていても「今年のトレンドを占う」、「国政や企業経営の課題」という、「こうなる」や「こうしなければいけない」という論調が目立ちます。「私はこうする」という意思や決意の入った「約束」につながるものが感じられません。

 日本では失業だ、年金や健保、財政の破綻だと云うことですから、計れといっても苦しい挽回計画で夢がありません。こうまでしらけてしまっては2000年の年明けぐらいで何かが変わるわけでもなく、神風が吹くようなことはないというあたりまえの事実だけが残ります。

 タイでは年末の誕生日にあたって国王陛下が国民に向かって語りかけますが、いつも具体的な事例を混ぜて民を諭し、課題の解決に向かって協調と努力を訴えます。疑う心無く人の話を聞いたり読んだりするのがこんなに気持ちの良いものだったかと思います。このお話がどれだけ一人ひとりの行動に結びつくのかは保証の限りではありませんが、素直に行動することがあって初めて批判精神も意味が出てくることを思い出させます。

 誰もが尊重する心を失い不満の鬱積した閉塞した状況が続くと、極端を唱えて打開を図る権力の台頭など危険もありえないことではないでしょう。新聞に「なにやらきな臭い匂いがしてきた」と書くだけで防げるものではありません。

 西暦2000年の正月には千年はともかく、十年の計、百年の計は視野に入れたいものです。素直に人の話に耳を傾け、自らの行動を約束する「計」を練る習慣がみんなにあれば、社会が「希望」を失うことはないといます。

〈了)

 

 

 


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