第84回

形から入って形しかない

  

 

 日本の知的生産の技術というと、情報の整理術、あるいはカードやOA機器など道具の使い方などツールや方法論そのものが中心です。一方欧米のタイムマネジメントツールなどはまず人生の目的やその年のゴールを書かせるようになっています。ツールはセミナーと一体になっていたりして、そこではまず自分の人生、何のために何をすべきかを見つめ直します。多忙な人にとって一番無駄なことは忙しさに流されてしまうことだからです。

 日本人はどちらかというとWHYよりもHOWを好んで手段を目的化しがちな傾向が強いということが言えるでしょう。キャリアウーマンなる言葉が流行った頃に典型的なように、ライフよりもライフスタイルに重きがおかれたりするのも似たところがあります。

 「とにかくモノを買え」といわれている日本人にこういうことを言うと叱られるのかも知れませんが、やはり人生、形やモノあるいは方法論より中身とその目的を問いたいものです。

 タイの人も形にこだわって中身がないとよく云いますがどうでしょうか。肩書への固執、立派な装丁だけど内容の薄いレポートなど、会社のなかでも頷けるところはあります。一時期あるローカルスタッフが打ち合わせのたびに違う新型の電子手帳を持ってくるのに目を丸くしたことがあります。モノやスタイルにこだわるように見えますが、それは日本人がそうだったように先端技術や文化へのあこがれかもしれません。まずは形が目的になるのでしょう。

 日本人駐在員はその仕事に中身はあっても、往々にして多忙に流されその仕事をする事の意味付けが弱かったりします。日系企業で働くタイ人がそんな日本人駐在員に「中身のある仕事をしろ」と言われるのですが、中身のある仕事と一緒に中身のある人生もお忘れなきよう。

〈了)

 

 

 


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