第87回

ロケーションスタディ

  

 

 筆者が本格的な関わりをタイともち始めたのはタイに新工場を作る仕事にアサインされた時で最初にタイに用地調査の出張をしたのが1989年の12月でした。当時タイでは工業団地内の用地が逼迫すると同時に、バンコク市内の工業立地に厳しい規制が敷かれた時期であり候補地のリストアップは簡単ではありませんでした。

 初めての自社単独でのタイ進出でしたから、社内にもタイに詳しい人間も情報も無く、タイ政府、投資委員会の東京事務所などを頼っての始動となりました。タイの工業開発計画を見てチェンマイ・ランプーンから入り、アユタヤ、チョンブリ各地を回り、最後にはソンクラーまでタイを縦断したのが最初の調査でした。電子製品の組立工場の立地場所を探すのにソンクラーの港まで行ったのはご愛嬌ですが、勝手を知らないがために出かけて行って、タイの産業の状況、開発計画とその実態などいろいろな事に対して理解と感覚が得られたのは結果的には有意義だったと思います。

 立地条件は比較的良いが造成がこれからで日程リスクの大きな候補地、用地は造成済みだが物流や調達の環境に厳しいものがある候補地など難点のある候補地ばかりで、最終決定までには3ヶ月の間紆余曲折がありまし。

 少しでも条件の良い場所に立地することは重要ですが、点数付による紙の上での比較には限界があります。不確定な要素があればなおさらです。周到な調査と注意深い分析は必要不可欠ですが、瑣末なことに拘泥して時間を浪費するのは賢明とは云えません。環境条件の多少の優劣にかかわらず上手な人間はそれなりにうまくやり、下手くそはやはり下手です。立地条件がある程度の範囲に入ってくれば、あとは「どこにするか」より「誰にやらせるか」、「どうやるか」がずっと重要に思えます。

〈了)

 

 

 


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