第89回

許認可手続き(1)

  

   

  「この仕事をやる人は死にますよ」9年前、建築業者さんと新工場用設備の免税輸入の手続について話し合っていると正面からそんなことを言われどきりとしました。筆者は事業計画を策定した流れでそのまま官公庁の許認可関係の業務も担当していて、まさにそれが冗談に聞こえない七転八倒の状況にありました。

 海外からの直接投資ラッシュの当時、タイではあらゆる業務が混雑し遅滞して、港ではコンテナが、役所では申請書類が山積みになっていました。なんとか自社のコンテナが山の下のほうに詰まれ行方不明にならないよう、また書類を山の一番上に載せてもらえるよう知恵を絞り、役所や港に詰めて書類や貨物の動きを見張ったりオフィサーの仕事を手伝ったりもしました。

 ただですら輸入貨物の流れが遅滞しているときに、船積書類の不備や免税サポートレター取得の遅れなどで貨物が一ヶ月たっても港から引き出せないなどと言う話はざらで、それを打開するために表から裏から手を尽くす中、胃を痛め、体を壊す担当駐在員が多かったことが冒頭の忠告ともつかない言葉に繋がっていました。今でもサポートレターとかストックカットという言葉を聞いて身の縮む思いをする方も多いことでしょう。

 同様の困難に直面していた日本人の多くがタイのお役所の煩雑な事務手続きやオフィサーの杓子定規かつスローモーな仕事、プロセスの不透明さなどに憤懣をぶつけていました。

 しかしオフィサーや事務手続きに問題はあれ、大きな原因は完全なオーバーキャパシティと、前例のないビジネスや物品の扱いに手続きがマッチしないことであることは明らかでした。また筆者がいろいろ見聞きした限りでも、むしろ日系企業の不手際や無理解が事態をややこしくしているケースも少なくなかったのです。

 

 


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