第92回

就業規則と規律

  

 

 筆者の勤務先に新たな駐在員が着任すると会社の就業規則、賃金体系、昇格昇給システム、タイの労働法規などを徹底的に勉強してもらいます。これらの重要性はあらためて述べるまでもないことと思います。当地の労働事情を理解してもらうためですが、日本からの赴任者に管理者としての経験が少なかったり、あるいはまったく無かったりしますのでこの種の教育は非常に重要です。

 処罰もまた日本人管理者の慣れないところです。解雇などの場合は会社のトップにも情報が行きますので、経営側の意思統一に問題があるようなことはないでしょうが、口頭警告や文書警告などの場合は部門マネージャークラスの権限で行われることも多く、部門間で処分の強弱に差があったりすると後々の問題の火種になります。

 最近会社の人事部が新しく社内の規律の解説書を作って配布してくれました。約40ページ、4分類95項目にわたり就業規則上の規律が事例を使って解説してあります。「横領するな」、「酒を飲むな」、「喧嘩をするな」といった具体的な項目はよいとして、曰く「作業においては誠意ある態度を示す」とか「会社あるいは社会に損失を与え得るいかなる行為もしてはならない」という一見漠然とした項目も過去に発生した具体的例で説明してあります。会社ができて10年、よくもまあこれだけいろいろなことがあったものだというぐらい事例には事欠きません。

 このような事例集を作るのは大変手間のかかることでどの会社でも簡単に作ることができるものではありませんが、非常に役に立つことは事実です。各種セミナーに参加すれば似たような情報を入手できますが、貴重な自社の事例を「思いついたときに断片的に語るだけの属人的な経験談」に留まらせないようにしたいものです。

〈了)

 

 

 


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