第98回

10年後

  

 

 現在のタイ社会を1990年当時と比べるとその変動には著しいものがあります。社会、政治、経済、そして街も人も変わりました。クーデター、民主化運動、流血事件から憲法改正。バブル経済とその崩壊、そして通貨危機。バンコクでは床に穴のあいたポンコツタクシーが姿を消し、ミニバスやサムローめっきり減りました。スコールの後の浸水も少なくなるとともに、OLのサンダルがパンプスになりました。商店の品揃えやテレビドラマなどを見ていても人々の生活や日常の関心事が変わっているのを感じます。10年は歩めば長く、振り返れば短いものです。

 一方で、10年後のタイがどうなっているのかを考えるのも楽しい遊びです。高速道路網の拡充や新空港、地下鉄の開業などはまず大丈夫。もしバンコク・オリンピックが開かれるならば、その時、街中はずっと美しくなっていることでしょう。「いや、そうはならない」と言う人もいるかもしれませんが、筆者は、そちらに向かう人々の確かな意思を感じます。10年後、そんなタイの人々の表情はどんなでしょうか。産業の重心がさらに南東方向に移動するなど経済面でも構造が変化するでしょう。果たして金融再建はなるのか。どの産業が牽引車になっているのか。

 そして、バンコクの日本人社会やそのプレゼンスはどうなっているでしょうか。次の10年のタイを築いて行くのはもちろんタイの人たちですが、その過程で、日系企業などにおいて駐在員の重要なことも変わらないでしょう。しかし、駐在員の果たすべき使命は、10年前と今で異なるように、10年後にはまた今と違っているはずです。

 「現」駐在としては、休日のプールサイドで青空に未来を見つめ、10年後の現法における駐在の役割を思い描いてみてはいかがなものでしょうか。

〈了)

 

 

 


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